臨床心理士 嵯峨敏也が活躍する「カウンセラー」の完全版として、角川文庫から出版。
前作(小学館版)がまだ本棚に埋もれたままなのですが、別作品としても楽しめそうなのでこれはこれであとの楽しみにとっておこうかと。
千里眼のシリーズと同様、過去作品の改稿(にとどまらないものも多いですが)と時代にあったテーマをとりあげる「完全版」らしく、昨今の激化する少年犯罪を題材に取り上げつつも、メインテーマとして「人の心」が芯として描かれている点は、さすがというほかないですね。
心理的に異常な状態に置かれた時に脳が受ける影響について、たとえば臭いに敏感になるとか、触覚に敏感になるとか、そういった変化を具体的な症例として緻密に描いている点もまた、松岡作品の真骨頂。途中、偽札が登場したときには唐突な感じもありましたが、最後まで読み進めていくとなるほど、と合点がいきました。
ややもすると、展開に無理がありがちな、心理状態の変化の描写については、もう見事というしかありません。嵯峨が真実が知りたい、として最後に響野由香里に施したカウンセリング(罠?)手法、へぇ・・・と唸るしかありませんでした。